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僕が住むこの地域にはある伝承があった。

 

満月の夜、

たった一人で裏山の奥にある星の湖に向かい

水面に移った月に向かって

願いを唱えると

その願いが叶うという。

幼い頃から子守唄のように聞き続けてきた伝承

 

ただの噂

 

そう思っていた・・・・・・

この時までは。

満月の光がまぶしい夜、

真っ赤に染まる森を駆け抜け、

僕は

半信半疑ながらも湖に向かって願いを叫ぶ

 

どうか夢であってほしい。

そう願い

再び目を開けたそこは

僕がよく知る、全く知らない場所だった

僕のよく知る彼女も

僕がよく知るあの人も

誰も彼も、僕自身も

誰も彼もが僕の知らないものだった

ただ一つ

湖の伝承を除いて

僕は一縷の望みをかけて

再び湖に願いを叫ぶ

それが、過ちだとは気づかずに・・・​

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